新規事業実務

新規事業の市場規模をフェルミ推定で出す手順書

「対象人口 × 購買率 × 購買額」のフェルミ推定4ステップで、市場規模の根拠を自前で作る方法。

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「この市場の規模はどのくらいか」を調べようとすると、高額な業界レポートか、数字の根拠が不明瞭な記事しか見つからないことが多くあります。フェルミ推定は、限られた情報から論理的に市場規模を推定する手法で、新規事業の企画書作成で実際に使われています。

フェルミ推定とは

フェルミ推定は「日本にピアノの調律師は何人いるか?」のような、正確なデータがない問いに対して、手元の情報と論理的な推論で概算を出す思考法です。物理学者のエンリコ・フェルミに由来します。

ビジネスでは、新規事業の市場規模(特にTAM:Total Addressable Market)の算出に使います。

フェルミ推定で市場規模を出す4ステップ

Step1:「誰が買うか」を定義する

対象顧客の母集団(人口)を定義します。日本全体の人口・特定の職業・特定の年齢層など、具体的な数字で表せる集合体から始めます。

例:「中小企業の新規事業担当者」→ 日本の中小企業数×新規事業推進企業の割合×担当者数

Step2:「どのくらいの頻度・割合で買うか」を推定する

母集団の全員が買うわけではありません。購買率・利用率を推定します。

例:新規事業推進企業のうち、外部ツール・サービスを使う割合は何%か

この数字は業界の常識・競合の顧客数・アンケートデータなどから推定します。「わからない」場合は保守(低め)・中位・楽観(高め)の3パターンで試算します。

Step3:「1件あたりの購買額」を推定する

顧客1人・1社あたりの年間支出額を推定します。競合サービスの価格・顧客が現在使っているコスト(代替手段のコスト)が参考になります。

Step4:掛け算してTAMを算出する

TAM = 対象人口 × 購買率 × 1件あたり購買額

例:

対象:日本の新規事業推進企業 50,000社
購買率:外部ツールを使う割合 20%
1社あたり年間支出:30万円
TAM = 50,000 × 20% × 30万円 = 300億円

フェルミ推定で絶対に守るべきルール

ルール①:計算過程を見せる 「市場規模は300億円」とだけ書くと、誰も根拠が分かりません。上記の掛け算の式と、各数字の出所を必ず記載します。

ルール②:保守シナリオを用意する 「購買率20%」を「購買率10%」に変えると市場規模は半分になります。数字の感度を確認することで、どの仮定が市場規模に最も影響するかが分かります。

ルール③:競合の実績で検証する 推定したTAMが、業界の有力企業の年商・顧客数と整合しているか確認します。推定TAMが「この業界のトップ企業の年商より小さい」場合、計算の前提に誤りがある可能性があります。

SAM・SOMへの落とし込み

TAMが出たら、次のステップです。

SAM = 目標売上高 ÷ 期待市場占有率
SOM = SAM × 現実的獲得率(競合状況・営業力から算出)

整合チェック:TAM ≥ SAM ≥ SOM ≥ 目標売上高

Startups with AIでの実践

Startups with AIの第5章「ビジネス価値評価」では、5年後の営業利益から目標売上高を決め、TAM・SAM・SOMを順に算出します。「わからない」と答えると、AIが公開情報や業界の平均的な値を調べ、出典つきで一緒に推定します(承認するまで前提にはなりません)。計算の過程が表示されるので、数字の根拠を説明できます。

まとめ

  • フェルミ推定は「対象人口 × 購買率 × 購買額」の掛け算で市場規模を概算する手法
  • 計算過程の開示・保守シナリオの用意・競合実績での検証が必須
  • TAMを出した後、SAM・SOMへの落とし込みとTAM≥SAM≥SOM≥目標売上高の整合チェックを行う

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